日本人の死亡三大原因は@癌A心疾患B脳卒中(脳血管障害)でありその成因としてライフスタイル(生活習慣)が大きく関与しています。心疾患、脳血管障害の原因は高血圧、糖尿病、高脂血症による血管の障害(動脈硬化)によるものです。その基礎には肥満が存在することが多く、肥満は万病のもとともいわれています。
日本人は軽度の肥満でも糖尿病などにかかりやすいといわれています。肥満では腹部の内臓脂肪細胞に過剰の脂肪が蓄積され大きくなりますがこの結果脂肪細胞から動脈硬化を促進する悪玉ホルモンが増加し、動脈硬化を予防する善玉のホルモンの分泌が低下します。2005年4月第102回日本内科学会総会において、内臓脂肪蓄積に焦点を合わし「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」を発表しました。メタボリックシンドロームの診断基準では、内臓脂肪の蓄積が必須条件と位置づけられ、他の3つの項目のうち2つ以上を満たしている場合に「メタボリックシンドローム」と診断します。
必須条件
具体的には、内臓脂肪の蓄積はウエスト径で判定します。男性85cm以上、女性90cm以上を基準値としています。この数字は、腹部CT画像で精密に内臓脂肪を測定した場合、断面積100cm2に相当します。 ウエスト径の正しい測り方はへそまわりを測ることです。腰の一番細いところではないので、気をつけて下さい 。立位で測定してください。
選択条件
次の内2項目以上
- 高トリグリセリド(中性脂肪)血症
150mg/dl以上かつ/または低HDLコレステロール(善玉コレステロールといわれているもの)
40mg/dl未満
- 収縮期(最大)血圧130mmHg以上かつ/または 拡張期(最小)血圧85mmHg以上
- 空腹時高血糖 110mg/dl以上
2000年の統計で約5分の1以上の人が肥満とされています。車、ITの発達で消費カロリーはますます減少していますが肥満予防には食事、運動に対する留意が必要です。一般に肥満者では早食い、まとめ食い、ながら食いが顕著といわれています。早食いでは急速に血糖が上昇しこのため過剰のインスリンが分泌され動脈硬化が促進されます。食事を十分味わって、規則正しく食事時間をきめて(就寝前はやめる)、野菜や海藻などを多くして満腹感をおこさせる、食料品のまとめ買いをやめるなどの注意が必要です。そして少し汗ばむ程度の運動を定期的におこなうことも重要です。
血糖値の上昇は糖尿病のサイン
われわれの体には活動するためのエネルギーが必要です。そのエネルギー源としては糖分(ブドウ糖)があります。血液中のブドウ糖は、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンにより一定の範囲にうまく調節されています。しかし、インスリンの分泌量が減少したり、作用が弱くなったりすると、血糖が常に高くなり血管が障害を受け、失明や心筋梗塞、脳梗塞の原因となります。「人は血管とともに老いる」といわれ、糖尿病による動脈硬化は増強しています。
糖尿病は年々増加し、現在では950万人、糖尿病が強く疑われる予備軍を含めれば2210万人とされています。人間は飢餓の危機に対応して生き延びてきましたが、現代は飽食の時代。運動不足や高齢化でインスリンの分泌不足や作用不足が生じ、血糖調節がうまくできなかったことが糖尿病増加の大きな要因です。
糖尿病は、血糖値が高いこと(空腹時126r/dl以上)で診断されます。また、血糖値を反映する検査としてHbA1cがあります。1回の採血で過去1〜2ヶ月の血糖の状態を推定できる検査で、血糖の平均値と称しているものです。HbA1cが6.5%以上が糖尿病をされています。糖尿病の症状には喉の渇き、手足のしびれ、疲れやすいなどがありますが、無症状の人も多く存在します。糖尿病は、治癒できませんがコントロールは可能な疾患です。健診などを受診し、日頃から血糖に少し気遣いをしてみましょう。
認知症の危険因子、高血圧と糖尿病のコントロールを!
生活習慣病は偏った食事、運動不足、喫煙などの生活習慣が深く関与している病気で、予防できるものです。その中でも糖尿病は近年増加し続け、患者は疑いを含めると1300万人に達し50歳以上では4人に1人が罹患している状況です。
糖尿病は、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、眼底出血による失明、腎不全による透析など多くの病気が血管の動脈硬化による血流障害で日常生活の質が大きく損なわれる病気と言えます。人は血管とともに老いるといった言葉がありますがまさに糖尿病の人は健康な人と比べて2〜3倍のスピードで老いるとも言えるでしょう。
一方、認知症は血管性認知症とアルツハイマー型認知症に大別されます。アルツハイマー型では、脳組織に廃棄老廃物とも称されるアミロイド物質などが沈着し、その結果脳神経細胞が障害されます。糖尿病では、血管障害とアミロイド物質が沈着を起こしやすい状態と考えられます。脳神経細胞は、一旦消失すると再生しません。認知症は国全体の問題で、高齢者の交通事故の多発を受けて75歳以上では免許更新の際、認知症の有無のチェックが義務付けられるようになっています。
認知症は、医療、介護を含め社会生活を著しく低下させます。進行を遅らせることはできますが治癒回復は困難です。
認知症の危険因子である高血圧や糖尿病を50〜70歳でしっかりコントロールすることが重要です。
当院院長は倉敷中央病院の開放病床登録医です
適切で効果的な医療が効率よく行われる仕組みを
「病診連携」といいます。
病院を受診する際は、受診日を伝え紹介状を持参しましょう。 |